独奏マリンバのために作曲した《木霊》は、芭蕉の有名な句『閑かさや岩にしみ入る蝉の声』が詠まれたことで知られる山形の 立石寺(通称:山寺) を訪れた際の印象をあらわしたものです。 曲は、緩ー急ー緩の3曲構成となっています。 第1曲は、静寂の中、蝉の声、鳥の声、湧き水の音、木々のざわめきなどがシャワーのように降り注いでいる様、またはそれらの音が奇岩に反響して聴こえてくる様をイメージして作曲しました。 第2曲は、第1曲とは対照的に、動きのある曲想となっています。「木霊」は樹木に宿る精霊で、山中を敏速に自在に駆け回るとされているそうです。様々な音が反響し合い、山の中を「ぐるぐる巡っている」様を表現してみました。 第3曲は、山寺周辺の夕暮れ時をイメージしています。奥深い山あいに立地しているためか、夏にもかかわらず夕方4時頃になると既にあたりは薄暗く、人気のない参道にはヒグラシの鳴き声がもの悲しく響き渡っていました。その侘しさを、同音連打およびトレモロ奏で表現してみました。 第1曲(抜粋)を、山寺のある宝珠山の風景とともにお聴き下さい。 MIDI音源による抜粋の演奏なので、実際の曲の雰囲気とは異なりますが、ご参考ください。 立石寺は、千段余りもの石段を登ったところにあり、寺に至る山腹には奇怪な姿をした険しい崖が屏風のように連なっています。崖は海底火山の噴出物からできていて、表面には風化による凹凸や風化穴が多数あります。これら表面の凹凸にによって特有の音響効果がもたらされ、その特異な景観とも相まって、山全体には不思議な空間が広かっています。 本作品は、2011年11月静岡にて行なわれた、私の作曲の師匠・大槻寛先生の退官記念演奏会でマリンビストの仙波明子さんによって、初演されました。その後、2012年 12月23日(日)岐阜市民芸術祭「リサイタルシリーズVol.2」で、再び仙波明子さんに拙作「木霊〜マリンバのための」を演奏していただきました。 もし、この曲に興味を持っていただけましたら、楽譜、音源などございますので、メールにて、お問い合わせください。→ メールする