スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

5月, 2013の投稿を表示しています

木霊〜マリンバのための〜 Echo in the Wood for Solo Marimba

独奏マリンバのために作曲した《木霊》は、芭蕉の有名な句『閑かさや岩にしみ入る蝉の声』が詠まれたことで知られる山形の 立石寺(通称:山寺) を訪れた際の印象をあらわしたものです。 曲は、緩ー急ー緩の3曲構成となっています。 第1曲は、静寂の中、蝉の声、鳥の声、湧き水の音、木々のざわめきなどがシャワーのように降り注いでいる様、またはそれらの音が奇岩に反響して聴こえてくる様をイメージして作曲しました。 第2曲は、第1曲とは対照的に、動きのある曲想となっています。「木霊」は樹木に宿る精霊で、山中を敏速に自在に駆け回るとされているそうです。様々な音が反響し合い、山の中を「ぐるぐる巡っている」様を表現してみました。 第3曲は、山寺周辺の夕暮れ時をイメージしています。奥深い山あいに立地しているためか、夏にもかかわらず夕方4時頃になると既にあたりは薄暗く、人気のない参道にはヒグラシの鳴き声がもの悲しく響き渡っていました。その侘しさを、同音連打およびトレモロ奏で表現してみました。  第1曲(抜粋)を、山寺のある宝珠山の風景とともにお聴き下さい。 MIDI音源による抜粋の演奏なので、実際の曲の雰囲気とは異なりますが、ご参考ください。 立石寺は、千段余りもの石段を登ったところにあり、寺に至る山腹には奇怪な姿をした険しい崖が屏風のように連なっています。崖は海底火山の噴出物からできていて、表面には風化による凹凸や風化穴が多数あります。これら表面の凹凸にによって特有の音響効果がもたらされ、その特異な景観とも相まって、山全体には不思議な空間が広かっています。 本作品は、2011年11月静岡にて行なわれた、私の作曲の師匠・大槻寛先生の退官記念演奏会でマリンビストの仙波明子さんによって、初演されました。その後、2012年 12月23日(日)岐阜市民芸術祭「リサイタルシリーズVol.2」で、再び仙波明子さんに拙作「木霊〜マリンバのための」を演奏していただきました。 もし、この曲に興味を持っていただけましたら、楽譜、音源などございますので、メールにて、お問い合わせください。→ メールする

「音楽の語るもの」Sound and Silence -Classroom Projects in Creative Music-

先日、 東京で古本屋巡りをした際、「20世紀の対位法」 とともに、ジョン・ペインターら著「音楽の語るものー原点からの創造的音楽学習」も発見。パラパラと中身を見て「買い」と思い、これも買ってしまいました。 こちらは、定価4,500円のところ、5,000円でした。 この本の存在は、ずっと以前から知っていたのですが、当時は金銭的に余裕がなく、作曲そのものを扱った本や音楽理論書を買うのに精一杯で(何しろ音楽書は高価ですから!)、私にとっては「必要になったら買えばいい」のカテゴリーに属する1冊でした。 しかし、本当に欲しいと思った時には万事休す。既に絶版となっていたのを知り、大変残念に思っていたところ、偶然、古本屋さんで見つけました。 この本は、創造的音楽の授業を目指している学校の先生にとって、授業計画を立てる上で大変参考になると思います。また、授業の場でなくとも、地域学習、課外学習として創造的音楽学習を実践したいと考えている方にも、ぜひ一読していただきたい本です。(と言っても、絶版になってしまったので、入手はなかなか難しいとは思いますが...大きな図書館でしたら蔵書しているかも) さらに音楽の授業のためだけでなく、音楽家が「音楽とは?」「音楽は何を表現するものか?」等、原点に立ち返って音楽を見つめ直す「読み物」としても優れていると思います。 私は、この本の中の「音楽の素材は音と沈黙(sound and silennce)である」「音楽とは、ある表現意図にしたがって音と沈黙を組織することである」という文に、今更ながらハッとさせられました。 自身の創作を振り返ってみると、音、つまりsoundを紡ぎ出すことばかりに集中し、「沈黙(休符)」を効果的に用いようとする配慮に欠けていたなと、自覚させられました。 このことは、ぜひ、演奏家の皆さんにも自覚していただきたいです。書かれている音符を正確に、美しく表現することにのみ留意しないで、休符や、それによって生じる沈黙(静寂)も正確に感じ取って欲しいと。 この本では、実践(体験)しながら音列のこと、ヘテロフォニーや偶然性の音楽などの音楽様式のこと、和声感など、多様な音楽的素養が身に付くプロジェクトが紹介されています。350ページにも及ぶ内容なので、完読するまで

絶版の音楽書を求めて〜古本屋めぐり Looking for used books in music theory

先日、東京に行った際、古本屋巡りをしました。 自由が丘の 東京書房 さんで、絶版になっていたハンフレー・セアール著「20世紀の対位法」を見つけて、思わず買ってしまいました。 定価4,500円だったのが、なんと、8,500円! 以前から欲しいなと思っていたので即、買い!でしたが、それにしてもこのような音楽関係の良書は、需要が少ないということもあってか、すぐに絶版になってしまうのが残念です。(涙) 内容は、20世紀の著名な作曲家、ストラヴィンスキー、ミヨー、バルトーク、ヒンデミット、シェーンベルクなどの作品を、対位法の観点から分析していくというもの。さらに「独自技法の人々」として、ブゾーニ、アイヴス、ヴァレーズらの作品にも触れています。 本書では、20世紀の作曲たちが、和声法による作曲が主流だった18世紀後半〜19世紀より「前の時代」の手法である対位法に再び着目して創作していたことを明らかにし、一見(一聴?)複雑そうに感じる現代曲も、対位法的な分析をすることによって、フレーズ同士の「線対線」の関係を浮かび上がらせ、曲の組み立てや成り立ちを理解できるよう導いています。 冒頭では、半音階的対位法の発展について、バッハの「平均率クラヴィーア曲集 I」の h mollのフーガを例にとって説明してます。この曲は、主題に1オクターブ内の12音すべてを含んでいる先駆的な例として多くの音楽理論書で引用されていますが、この本では、後年の作曲家たちが、いかにバッハのh mollフーガからインスピレーションを得ていたかを、リスト作曲「バッハによる幻想曲とフーガ」の譜例を掲げて、より具体的に示しています。 初めは読みやすいのですが、だんだんと内容が濃くなってきて、曲を知らないと理解不能になってきます。やはりこのような理論書では、参照できる音源が付いていると良いですね。もちろんYouTube、 NAXOS   などで探すこともできますが、中には大変コアな作品もあって、音源が見つからない、あるいは見つけるのにとても苦労する曲もありますから。 かえすがえすも、このような現代音楽に関する本が絶版になってしまっていることを残念に思います。20世紀は、今となっては「過去」になりつつありますが、それでも長いクラシック音楽の歴史から見れば、前世紀の音楽といえども「新