先日、東京に行った際、古本屋巡りをしました。
自由が丘の東京書房さんで、絶版になっていたハンフレー・セアール著「20世紀の対位法」を見つけて、思わず買ってしまいました。
定価4,500円だったのが、なんと、8,500円!
以前から欲しいなと思っていたので即、買い!でしたが、それにしてもこのような音楽関係の良書は、需要が少ないということもあってか、すぐに絶版になってしまうのが残念です。(涙)
内容は、20世紀の著名な作曲家、ストラヴィンスキー、ミヨー、バルトーク、ヒンデミット、シェーンベルクなどの作品を、対位法の観点から分析していくというもの。さらに「独自技法の人々」として、ブゾーニ、アイヴス、ヴァレーズらの作品にも触れています。
本書では、20世紀の作曲たちが、和声法による作曲が主流だった18世紀後半〜19世紀より「前の時代」の手法である対位法に再び着目して創作していたことを明らかにし、一見(一聴?)複雑そうに感じる現代曲も、対位法的な分析をすることによって、フレーズ同士の「線対線」の関係を浮かび上がらせ、曲の組み立てや成り立ちを理解できるよう導いています。
冒頭では、半音階的対位法の発展について、バッハの「平均率クラヴィーア曲集 I」の h mollのフーガを例にとって説明してます。この曲は、主題に1オクターブ内の12音すべてを含んでいる先駆的な例として多くの音楽理論書で引用されていますが、この本では、後年の作曲家たちが、いかにバッハのh mollフーガからインスピレーションを得ていたかを、リスト作曲「バッハによる幻想曲とフーガ」の譜例を掲げて、より具体的に示しています。
初めは読みやすいのですが、だんだんと内容が濃くなってきて、曲を知らないと理解不能になってきます。やはりこのような理論書では、参照できる音源が付いていると良いですね。もちろんYouTube、NAXOS などで探すこともできますが、中には大変コアな作品もあって、音源が見つからない、あるいは見つけるのにとても苦労する曲もありますから。
かえすがえすも、このような現代音楽に関する本が絶版になってしまっていることを残念に思います。20世紀は、今となっては「過去」になりつつありますが、それでも長いクラシック音楽の歴史から見れば、前世紀の音楽といえども「新しい」ジャンルに含まれます。
私は、もっともっと今の時代の音楽=現代音楽に興味を持ってくださる方が増え、このような「新しい書法」について扱ったテキストの需要が増えることを願っています。
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