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和声のテキストー和声学って難しい?(追記あり)

作曲を学ぶ上で、和声と対位法の勉強は必須です。


私も、↓のテキストで和声を勉強しました。いわゆる「芸大和声」です。

和声−理論と実習,  島岡譲ら、音楽之友社

当時のことを振り返ってみると、第 I 巻や II 巻を勉強していた頃は、禁則を暗記し、禁則を犯さないようひたすら「課題を解く」だけだったような気がします。

本当に和声の勉強が面白くなったのは、第III巻に入ってからでした。

III巻になると、借用和音偶成和音転位などが出てきて課題も音楽的になり、さらに、フーガの小品を作曲する課題も含まれているので、学習の達成感も感じられるようになりました。

しかし、III巻に至るまでの道のりが、長い!
そして、説明がムズカシイ!

作曲を勉強している人は、目標があるので、最後まで頑張り抜こうと思えるでしょうが、そうでない人、つまり、ピアノや弦・管楽器などの実技専攻生にとっては、「和声の勉強って、こんなに難しいんだ」と苦痛に感じ、途中で諦めてしまうのでは?

和声全般の勉強は、作曲家を志す人のみならず、全ての音楽家にとって必須だと思うのですが、このシリーズ以外の和声のテキストを見ても、難解なものばかり。これでは、和声の勉強が「特別なもの」、と敷居が高くなってしまうのは、しかたないですね。

日本の「事情」しか知らなかった頃は、↑の写真のテキスト、または、これに準じたテキストで勉強するのが当たり前のように思っていたのですが、カナダに住んでみて、その常識はすっかり覆されました。

当地の和声テキストは、学習者の年齢や目的に応じて、種類がとても豊富でした。中には、とても簡潔でわかりやすく、取り組みやすく編集されているものも多くありました。

やはり、英語圏の人口は日本とは比べようもないほど多いので、その分、需要もあるためでしょう。様々な和声のテキストが出版されていて、それらの中から、自分に適したものを選ぶことができます。

ところで、私が学んでいたカナダの王立音楽院では、早い時期から和声の勉強を始めています。↓は、低年齢(中学生ぐらいまで?)の生徒のための和声のテキストです。




私は、その音楽院では和声クラス上級クラスで学んでいましたが、最初の頃は、上級クラス指定のテキストとは別に、↑の写真のMark Sarnecki著「Harmony Book 1(初級用)」で独習していました。それまで慣れ親しんでいた芸大式の特殊な和音表記から、世界標準と言える数字付き低音表記に移行するために、まずは、和声の基礎からざっと復習しておこうと思ったからです。

また、このテキストの英語表現は、私にとって程よいレベルでしたので、音楽専門用語の英語表記や、和声に関する英語の言い回しなどをひと通り身につけるためも最適だと思いました。

当初は「簡潔に復讐」のつもりでしたが、進めていくうちに、とても有意義なテキストだと感じ、もしかしたらこのテキストを真面目にコツコツと勉強したら、相当な力がつくのでは?と思いました。

以下に、このテキストの利点を挙げてみます。

まず、このテキストでは、初めのうちは一つの課題が2〜4小節なので取り組みやすく、すいすいと進みます。

テキストは、ほぼA4サイズと大きめ。また、ピアノの譜面台に見開きで置いてもページがめくれることがなく、学習に集中できます!

そして何より、譜例が大きい!これは最大の利点です。課題も、テキストに直接、答えを書き込むことができるサイズで掲載されています。

見た目の印象って、大事ですよね。日本のテキストは、どれもサイズが小さく、ゆえに中身の字も小さく、譜例も小さく、、、とても疲れます。また、見開きの状態が維持できないので、ピアノの譜面台に置いて音を出しながら学習するのには不向きです。

また、このテキストでは、初期の段階から、バス課題だけでなくソプラノ課題にも取り組むようになっています。そして、Book 1(第1巻)の後半から、非和声音や、内部変換、構成音の転位などを扱っています(芸大和声では、II 巻およびIII 巻で扱っている内容です)。このようなテキストを使って、比較的低年齢から、旋律に和声付けする、さらには旋律を「創る」ことを意識して、和声を学ぶシステムになっているのです。

さらに、日本の和声のテキストと大きく違う点は、その項目で学習している和声進行を含む曲例がたくさん掲載されていることです。そして、早い段階で、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ワーグナーなどの著名な作曲家の作品を和声分析する課題が出てきます。つまり、今勉強している和音や和音進行が、実際にどのように使われているか、を学ぶのです。それら楽曲のジャンルも、ピアノ曲のみならず、弦楽四重奏曲、オーケストラ作品、声楽曲など多種多様なので、幅広い視点から和声を学ぶことができると思います。

このテキストのシリーズも3巻から成っていて、各巻の終わりでは、バッハのコラールを勉強するようになっています。なるほど、

バッハのコラールは最高の和声テキスト

だと、あらためて思いました。

そして、このテキストシリーズの第3巻を終えると、一通り古典的機能和声を学んだことになります。つまり、最初に掲載した「芸大和声」のテキストとほぼ同程度の内容を学んだことになるのです。いずれの巻も200ページほどなので、それほど負担を感じることなく学習を進めることができます。

このようなコンパクトなテキストを用いて、低年齢から段階的に和声を勉強してけば、「和声アレルギー」などなくなるだろうな、と思いました。各声部の配置を、ただ禁則を犯さないよう注意しながら書き並べていく「ドリル」形式のものが多い日本の和声本と比べて、曲例も多く、大変実用的だと思います。

もちろん、音楽院の生徒たちには、和声の進級テスト(グレードテスト)も課せられています。理論のテストに合格しないと、演奏試験もパスしたことにはなりません。

その音楽院の和声のレベルは3段階に分かれていて、演奏ディプロマを取得するには、最高レベル(Advanced Level)のテストが合格しているのが必須条件です(その他にも、対位法、音楽分析等の音楽理論科目も最高レベル取得が必須)

で、その和声の最高レベルとは、このページの一番初めに紹介した芸大和声の第III巻の内容に相当します。

試験には、ある調による2小節の四声体モチーフが与えられ、それを指定された遠隔調(例えば、ハ長調から変イ長調へ、というように)に転調し、また元の調に戻ってくる問題も含まれます。これは、メロディも、和声付けも、その場で(紙面上で)創作することになります。日本では、音大作曲専攻志望の生徒が勉強しているような内容で、かなりハイレベルです。

つまり、音楽家になるには、作曲家を志すか否かにかかわらず、和声学をきちんと身に付けていなければならないという考え方なのです。

日本の音楽界では、とかく、演奏家は演奏技術の習得のみに専念しがちではないでしょうか?私の周りにも、和声は苦手、あるいは、あまり真剣に勉強しなかったという方が結構いいらっしゃいます。

良い演奏とは、「曲を分析し、深く理解し、最高のパフォーマンスを目指すこと」であるならば、和声の勉強は不可欠だと思うのですが。。。

私たちが普段聴いているほとんどの曲は、ホモフォニー(和声音楽)のスタイルのものです。主旋律とそれを支える和音から成り立っています。和声を勉強するということは、音楽の構成を理解することになると言っても良いでしょう。

私は、楽曲を和声の視点から眺めていると、まるで、音楽のナゾに迫るかのような、ワクワクした気分になります。この面白さを、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思っています。

和声の勉強って、それほど難しいとは思いません。

やはり、和声の勉強をやたら難しくしている日本のテキストに問題ありでは?もっと実用的で、わかりやすい和声のテキストがあれば、和声の勉強がもっと楽しくなのに、とつくづく思います。

【追記1】
私は、いつかカナダでの経験を生かした和声のレッスンを行いたいと、ずっと胸に秘めていました。そして、わかりやすい和声のテキストがないのなら、自分でつくってしまおう!とも。

でも、そうは思うものの、現実には目の前の仕事や日々の雑事に追われ、なかなか重い腰は上がらず、、、の状態でした。。。

しかし、この度、ようやく、その夢を実現する運びとなりました。

2017年9月より、和声オンラインレッスンを開講します。

このレッスンでは、自宅あるいは外出先から、専用Webサイトにアクセスすることによって学ぶシステムになっています。受講者一人ひとり専用のページで学習しますので、その方のレベルに合わせてカリキュラムを組むことができます。

詳しくは、本ブログ内の【一人ひとり専用のWebページで学ぶ和声オンラインレッスン】をご覧ください。
または、「お問合せフォーム」からお問い合わせください。
「お問合せフォーム」へ


【追記2】
和声の勉強がもっと身近に感じられる日本語のテキストを見つけました。
『説き語り和声法講座』(土田京子著、ヤマハミュージックメディア)

著者の土田氏は、私と同じカナダのトロント王立音楽院で勉強されたそうです。テキストに書かれている内容に共感できる部分が多いのは、そのことと関係があるのでしょうか?

この本の「はじめに」では、日本の音楽学校出身者で和声の勉強が面白いと思う人がとても少ない理由について、
その大きな理由に「分かる日本語」で書かれた教科書がなかった、という不幸が挙げられます。
と書かれています。 まさに、私が感じていた同じことを土田氏もお感じになっていたと知り、大変嬉しく思いました。

また、このテキストでは数字付き低音法に即した和音記号を用いていることも、オススメしたい点です。テキストの記述には、いわゆる芸大式和音表記について、
前記「和声法」教科書の影響力があまりに大きいために、このヨーロッパ伝統の表記法は日本では長く省みられることはありませんでした。
とあり、さらに、芸大式表記法を「日本人にしか分からない表記法」とも言及しています。

土田氏は東京芸大作曲科ご出身だそうですので、芸大式の和音表記法から離れることを推奨するのは勇気のいることだったのでは?とお察ししますが、このような踏み込んだ表現は、非常に示唆に富むものではないでしょうか。

もう一つ評価したい点は、「カデンツ」のについての記述です。このテキストでは、「カデンツ」を「終止形」と訳していることに疑問を投げかけていますが、私も実は以前から違和感を感じていました。「カデンツ」は終止の部分だけでなく、曲の区切りにも置かれているので、文章でいうと「句読点」に相当すると思うのです。

惜しむらくは、分かりやすさを追求したためでしょうか?実生活でのたとえ話を引用したり、言葉の表現を柔らかくしすぎている部分が、このテキストの「格」を少し下げているように思いました。

でも、そのマイナス点(?)を補うに十分な内容だと思います。

そういえば、このテキストもサイズがとても小さい(笑)。見開きでピアノの譜面台に置くことができれば言うことなしです。

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