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オーケストレーションの勉強のためのテキスト【追記あり】Textbook for orchestration study

先日、オーケストラのための作品を書き終えました。フ〜。


2管編成で、演奏時間もそれほど長くはない小品だったのですが、オーケストラ作品に取り組むのは久しぶりでしたので、書棚に長らく眠ったままになっていたテキストを引っ張り出してオーケストレーションの復習をしたり、巨匠たちの音源を聴いたりながら進めていましたら、結構な時間と労力がかかってしまいました。

ところで、オーケストレーション(管弦楽法)のテキストですが、↑の写真のSumuel Adler著「The Study of Orchestration」がおススメです。アマゾンでも販売しているようです。→こちら

トロントに住んでいる時、楽器店の楽譜コーナーで、たまたまこのテキストを見つけ、これは良い!と、即、買いました。お値段は少々お高めでしたが、、、

その後、アメリカの某有名音楽大学のオーケストレーションの授業でも、このテキストを参考書として挙げているのを知って、ちょっと嬉しくなりました。

この本のおススメポイントは、、、

1. 各楽器について、その外観・楽器のしくみ・歴史・音域等について、写真や図で詳しく解説されている。

2. その楽器に特徴的なフレーズ、その楽器でよく用いられる奏法についての譜例が豊富なだけでなく、別売りの音源で、それらの音を聴くことができる。

楽器一つ一つの音を聴きながら学べるというのは、とても魅力的です。
しかも、それらの音は、巨匠たちの名曲からピックアップした実際のフレーズなのです。

3. 楽器の組み合わせによる音色の違いにも言及。それらも別売り音源で試聴しながら確かめることができる。

たとえば、シューベルトの交響曲第8番第1楽章はオーボエとクラリネットのデュオで始まっていますが、もし、これが別の楽器の組み合わせだったら、、、と、フルート+オーボエ、フルート+クラリネット、オーボエ+バスーン、、というように組み合わせを変えて試聴していき、なぜシューベルトがオーボエ+クラリネットという組み合わせを選んだのか、について論理的に説明されています。

------追記------------
最近、このテキストを紹介している某サイトで、別売り音源は買う必要はないというコメントを拝見しました。YouTubeに参考音源はたくさんアップされていますから、それを聴くだけで十分だ、敢えて音源を買うほどでもない、と。

そうでしょうか?

このテキストの付属音源では、原曲の大編成による演奏の中から、その楽器のパートだけ、あるいは数個の楽器による演奏のみをピックアップして録音されているので、その楽器のその音域の音色や、楽器の組み合わせによる音色が明確にわかります。

また、テキストの譜例をDTMで再現することができるので、音源を買うほどでもないというご意見もあるようですが、コンピュータ音楽は、所詮人工的なものです。いくらサンプル音源が進歩して、本物そっくりの音が再現できたからと言っても、本物には敵いません。生の楽器による息遣い、音域やアーティキュレーションによる音色の違いなどは、本物の楽器で演奏されたものを聴いて勉強すべきだと思います。
-------追記終了---------

4. 20世紀の作品や、現代奏法を取り入れた楽曲の譜例や音源も多く掲載されている。

このテキストの初版は1982年に出版されたようですので、この分野のテキストにしては比較的新しい部類に入ると思います。ですので、譜例として掲げられている作品には、現代音楽の部類に属するものも多く含まれています。


などなど、、、おススメポイント満載です。

オーケストラの作品を書くにあたっては、もちろん全ての楽器を演奏することができて、全ての楽器に精通していることが理想ですが、なかなかそうもいきません。このテキストは個々の楽器についての解説に多くのページが割けられていますので、「楽器について知る」ためにも、1冊手元に置きたい良書だと思います。

英語で書かれているので、英語の読解力も必要ですが、、、
英語にあまり自信が、、、という方でも、楽譜を見て音源を聴くだけでも、とても勉強になりますよ。

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